2017.9.5 | CATEGORY : THE FACTORY
発売以来、大人気のJAMMINのくみひもブレスレット「TORIKURU」。
製造をお願いした「昇苑くみひも」さんへ、くみひもの工程を取材しに行ってきました!
京都・宇治。
世界遺産に登録された平等院があるほか、お茶の産地としても知られ、年中観光客の絶えない人気のスポットです。
お茶屋さんやお土産屋さんが並び、喧騒な通りを一本路地裏に入った静かな場所に「昇苑くみひも」はあります。
訪れたのは7月、夏も真っ盛りの時期。
玄関にあるメダカの蓮華鉢が涼しげです。
迎えてくださったのは、「昇苑くみひも」の企画・営業担当の八田俊さん。
(「昇苑くみひも」の八田さん。後ろにあるのは手組みの「高台(たかだい)」。)
私たちがお願いした「TORIKURU」は、なかなか時間を要したプロジェクトだったのですが、企画の段階から、すべて八田さんが担当してくださいました!
一本一本、昔ながらの製法で丁寧に組まれたくみひも。その製造現場をご紹介します!
TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
店舗からすぐのところに、くみひもを製造している工場があります。
(「昇苑くみひも」製造工場の入り口。)
早速、八田さんにこの工場内を案内していただきました。
くみひもの素材になるのは、絹(シルク)糸のほか、ポリエステルやレーヨンなど化学繊維の糸。それぞれの糸に特徴があるため、用途に合わせて素材を変えたり、組み合わせたりするそうです。
伝統的なくみひものメインの素材になるのは、絹糸。TORIKURUで使われているのも、100%絹糸です。
(染色前の絹糸。細くしなやかで、サラサラしている。)
「昇苑くみひも」では、絹糸の染色から一貫して自社で行っているのだそう。
染色はほかの業者に頼む会社が多い中で、自社で染色まで一貫してやっているのはめずらしいことなのだそうです。
(染色した糸は、一本ずつボビンに巻く「糸繰り」を経て、次の工程に向けてスタンバイ。)
染色後、一度ボビンに巻かれた糸は、仕上がりのイメージを元に糸の本数や色、長さを組み合わせながら何本かの糸を束にして巻き取る「経尺(へいじゃく)」の工程へと入ります。
一概に“くみひも”と言っても、太さや柄、長さは用途に応じてそれぞれ異なります。仕上がりに合わせて糸の束の本数や糸の色を変え、束にして巻いていきます。
(経尺の工程。写真は6本の糸を一束として巻き取っている様子。仕上がりの太さ次第で、巻く糸の本数を変えていく。)
糸を巻く時点で「どんなくみひもを作るのか」、出来上がりをイメージしながら作業を進めていくのですね。
また、美しいくみひもができるかどうは、この工程でほつれや糸切れがなくしっかりと巻くことが重要なのだそう。くみひもの仕上がりを左右する、大事な工程です。
次に、「撚糸(ねんし)」の工程へ。
字のとおり、糸に撚(よ)りをかけていきます。そうすることで、糸を硬くし、切れにくい丈夫なくみひもができるのだそうです。
(撚糸の工程。仕上がりによっては、あえて撚りをかけない場合もあるのだそう。)
この工程を経た後、いよいよ紐を組み上げていきます。機械によって対応できるボビンが異なるため、それぞれの機械に合わせたボビンに、糸の束を一つひとつ手作業で巻き取り、下準備が完了となります。
工場内には、なんと30種類、50台もの機械があるのだそう。
(所狭しと機械が並ぶ光景は圧巻。)
大きさやセットできるボビンの数、動き方もそれぞれですが、八田さんに尋ねてみると、それぞれ機械によって得意な組み方や組める紐のパターンが異なるのだそうです。
5〜60年前の古い機械なので、丁寧にメンテナンスしながら使っていますが、逆にいえば、アナログなのでいろんな風にアレンジできます。
と八田さん。
出来上がりを想像しながら機械をセットし組み上げてきますが、あるときは想像以上のパターンが組み上がってくるのだそうです。奥深い世界ですね。
(レトロな雰囲気が漂う機械たち。歯車を噛み合わせながら、まるで時を紡ぐように、一組み一組み、着実に組み上げる。)
(こちらは直径1メートル近くある大きな機械。休む間もなくクルクルと回転し、紐を組み上げていく。)
(こちらの機械では、ミサンガのような平たい紐を組み上げ中。他にも、重りをつけて目の詰まったくみひもや、中に筒を入れて空洞のくみひもを作ったりも可能。)
(一つひとつ思い入れのある機械は、修理を加えながら大切に使っているのだそうだ。セットする機械や使用する糸の色、本数次第で、無限の可能性が広がる。)
こうして出来上がったくみひもは、それぞれの用途に合わせて切断され、加工されます。
(完成したくみひもは、用途に合わせて様々なかたちに加工される。棚には色鮮やかなくみひもが並ぶ。)
(こちらは、くみひもで作った玉のついたヘアゴムを加工中。)
「くみひも」と聞くと、帯締めや羽織紐をイメージされる方が多いのではないかと思います。一体、どのような歴史があるのでしょうか。
飛鳥から奈良時代に、仏教と共に大陸からくみひもの技術が伝わってきたと言われ、その後日本で独自の発展を遂げました。
最初は階級の高い人たちの装飾品としてのニーズがあり、京都を中心に産業が栄えたといいます。
その後進化を遂げ、鎌倉時代以降は武士たちの各々の個性を出すためのアイテムとして重宝されていきました。武士が腰から刀をぶら下げるための紐もくみひもでできているし、鎧の紐もすべてくみひもです。
武士におかかえのくみひも職人がいたぐらい、くみひもは彼らにとって重要なアイテムでした。
八田さんによると、武士たちが個性を競い合ううちに、どんどん柄も複雑になり、自然と技術が磨かれていったのだそうです。
しかし、1876年に廃刀令(特別な場合を除き刀を身につけることを禁じた法令)が施行され、くみひものニーズは一気に減ることになります。この頃から、私たちにも馴染みのある帯締めとしてのくみひもの生産が徐々に盛んになり、それまで高級品だったくみひもが、庶民にとって身近なアイテムとなっていきました。
「昇苑くみひも」が創業した1948年当時は、まだ和装の帯締めとしての需要があったといいます。
しかし、時代の流れとともに帯締めの需要が減ることを予見していた「昇苑くみひも」の初代社長は、くみひもの伝統を守るかたわら、当時よりくみひもを使って、時代のニーズにあった新たなアイテムの開発に取り組んできました。
現在では、帯締めだけにとらわれないくみひもを使ったオリジナルアイテムを多数開発し、販売しています。
「昇苑くみひも」のオリジナルアイテムは、職人さんが提案して作っています。
実際に現場でくみひもの制作に携わっているので、「くみひもを使って何ができるか」がはっきりわかっている。
その分、特徴や良さを生かしたアイテムが誕生しています。
と八田さん。
みんながあっと驚くような用途や、昔からあるものも色の組み合わせで遊んだりして、くみひもの世界に新しい風を吹かせ続けています。
(店舗にはアクセサリーやコースター、キーホルダーなど、色も鮮やかなアイテムが並ぶ。購入可能なので、観光に訪れた際にはぜひ!)
くみひもは“素材”なので、どうしてもメインにはなりづらい。でも、アイデアや組み合わせ次第で、本当にいろんな可能性がある。
伝統を守りつつ、できる限り新しい取り組みをしていきながら、紐の可能性を追求していくのが私たちの仕事。
くみひもへの思いについて、そう語ってくれました。
一通りの工程を見学させていただいた後、一つひとつの細かい工程に、頭が下がる思いがしたのと同時に、それぞれの工程を経て完成した「TORIKURU」へも、より一層の愛着が湧きました!
自分用に、またプレゼントとして、日常生活にちょこっと日本の伝統を取り入れてみませんか。
取材協力:昇苑くみひも
京都府宇治市宇治妙楽146(本店)
昇苑くみひも ホームページ